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SOHOコラム#3

女性の起業力について感じたこと

先日、とある京都の金融機関が開催した起業家アワードの優秀賞受賞者10名の方の発表に誘っていただきプレゼンを聞く機会に恵まれた。

どれも優秀賞に選ばれるくらい立派な内容の発表だったのだが、後になってふと気づいたことがある。

女性の起業家の発表が3件あったのだが、他の発表と違い、女性ならではというか、女性独特の視線で起業をしているからである。

世の中に神様の気まぐれか、いたずらで障がいをもって生まれてくるお子さんを持ち、育てておられる親御さんがいる。

五体満足で生まれてきてくれると思っていたのにそのショックは思い知れないものであろう。生まれてきたときから壮絶な育児が始まることは想像に難くない。

その起業家の女性もそんな生活の中に埋もれていったはずである。

 

大手自動車メーカーで車の商品開発をしていたという彼女は自分の子どもに寄り添って生活するために会社を退職して起業する。

 

彼女は障がいを抱えた子どもを持つがゆえに健常者の子どもとは違った生活体験を余儀なくされる。

外に出かけるときには障がいがあるがゆえに装備が重くなり出かけるにも億劫になりがちである。

そこで彼女が考えたのは「身体的なチャレンジを抱える子どもたちとその家族の体験から学び、一般のファミリーも価値を感じられるデザインに還元するというアプローチのものづくりを通してインクルーシブな社会に貢献することを目指すブランド」として立ち上げたのである。

 

その製品は障がい児をお持ちの親ならずとも、健常者の子どもをお持ちの親でも外出する際に欲しくなるような、折りたためばトランク状に収まり肩からかけて運べる軽量の携帯のサポート椅子を開発したのである。

これで障がいを抱えた子どもだけでなく、健常者の子どもにも広く使えることで垣根をなくしていく。

 

最近は男性も積極的に育児に参加しているが、この例などはまさに女性の視点で起業されてものだと思う。

(障がいのある子どもを育てる)自分と一般の人たちの、何か分断しているものを感じたがゆえにこの起業につながったのだろうと思う。

 

何か、一山当てて儲けたいという発想ではなく、社会を変えたいという思いがなせる起業であろう。

他の二人の女性の起業も女性特有の妊娠や出産、子育てという過程で起こる様々な問題にフォーカスし、助産師の資格を持つ女性起業家はかつて自分が体験した産後うつの母親に寄り添えなかったために乳児が母親による虐待で死亡するという現実に向き合い、産後のお母さんの心身のケアの必要性を認識し、自らの手でそれを実現する施設を作ったのである。

 

 両社とも熱心でコアのある起業者であり、こんな人には周りに共感した人や協力してくれる会社が集う。こんな起業家が成功する社会であってほしいつくづくと思う。